この記事の読み方8のポイント
交流電源につながる一次巻線と、負荷につながる二次巻線が、共通の閉じたコアを介して磁気的に結び付く概念図 拡大して見る ↗
図 01複巻方式の関係図。左の橙は交流電源と一次N1、右の青は二次N2と抵抗負荷Rで、別の電気回路です。灰色は共通のコア、緑の対向矢印は磁束Φが交互に向きを変えることを示します。同時の逆向きの磁束やコアを流れる電流ではありません。線数は実巻数を示さず、巻線の奥行き・絶縁層・実機の積層構造・寸法・極性は単純化しています。
  1. 交流電源:一次側に接続する
  2. 一次N1:橙色の独立した巻線
  3. コアと磁束Φ:二巻線を磁気的に結び付ける
  4. 二次N2:青色の独立した巻線
  5. 抵抗R:二次の回路につながる負荷
働く順番をたどる

一次の交流から、二次の負荷へ。

交流・磁束・誘導電圧・負荷・調整

独立した二つの巻線を持つ複巻方式の役割を追います。整流・平滑・制御は変圧とは別で、電源装置によって部品や順序は異なります。

01一次巻線交流電源につながる
02共通のコア変化する磁束を結ぶ
03二次巻線電圧が誘導される
04負荷の回路負荷に応じた電流
05別の出力調整整流・平滑・制御
  1. 01

    一次へ交流電圧を加える

    電源側の巻線に、時間とともに変化する電流と磁場が生じます。

  2. 02

    磁束の変化を二次へ結び付ける

    共通のコアは磁束が通りやすい道を作ります。電線の直結ではありません。

  3. 03

    二次に電圧が誘導される

    理想モデルでは、同じ磁束の変化による電圧が巻数に応じて生じます。

  4. 04

    負荷に応じて電力を渡す

    二次の回路をつなぐと、負荷に応じた電流が流れます。入力からエネルギーを受け取ります。

  5. 05

    必要な出力の調整を分けて考える

    直流出力が必要なら、変圧のほかに整流・平滑・制御などを使います。

巻線・コアの記号は実巻数・端子極性・配線を示しません。一定の直流を交流用トランスへ直接つなぐ使い方ではありません。

変圧器は、磁場の変化を介して電圧を変える

変圧器は、交流の電圧を上げたり下げたりする装置です。「トランス」とも呼ばれます。電柱の上にある変圧器と、電子機器の電源に入る小さなトランスでは大きさや設計が違いますが、電磁誘導を利用する点で共通します。

ここでは、共通のコアに二つの独立した巻線を巻く複巻変圧器を入口にします。巻線は、絶縁された導線を巻いたものです。電源につながる側を一次、電気を取り出す側を二次と呼びます。

**一次と二次は、電線で直接つながっていません。**それでも電気のエネルギーを渡せる理由は、巻線を通る磁場の変化です。すべての変圧器が、この独立した二巻線の構造というわけではありません。

電流の通り道と、磁束の通り道は別

図1では、左に交流電源と一次巻線、右に二次巻線と抵抗の負荷を描いています。橙色と青色は別々の電気回路です。灰色のコアは、磁束が通りやすい道を作り、二つの巻線を結び付けます。

磁束は、巻線の囲む面をどの向きにどれだけ磁場が通るかを表す量です。一次に交流電圧を加えると、電流によって変化する磁場が生じます。その変化がコアを通じて二次巻線にも関係し、二次に電圧が誘導されます。二つの巻線の間で起こるこの作用を相互誘導といいます。

図の緑の対向矢印は、磁束が時間とともに向きを変えることを表します。同時に逆向きの磁束が流れている図でも、電子がコアを渡っている図でもありません。

二次につないだ負荷に電流が流れると、電源から負荷へ電力が供給されます。二次の回路が開いていれば、電圧が生じても、その外部回路へ電流を流し続けることはできません。実物の一次側には、二次が開いていても磁場を作るための電流や損失があります。

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変圧器の役割・理想条件・負荷・出力調整を比較する
図の部分 役割 混同しないこと
交流電源・一次巻線 変化する磁場を作る側 一次の電子がそのまま二次へ移るわけではない
コア・磁束 二つの巻線を磁気的に結び付ける コアは二つの電気回路をつなぐ電線ではない
二次巻線 磁束の変化によって電圧が生じる側 出力電流は接続した負荷にも依存する
負荷R 電気を受け取る側 図では説明を単純にするため抵抗を使う

巻数の比が、電圧の比になる

同じ磁束の変化が各巻線に結び付く理想的な変圧器では、一巻きあたりに誘導される電圧は共通です。そのため、二次の巻数を一次の半分にすると、二次の電圧も一次の半分になります。反対に二次の巻数を2倍にすれば、電圧も2倍になります。

巻数をN、電圧をVとすると、関係は V2 ÷ V1 = N2 ÷ N1 です。1は一次、2は二次を表します。電圧を下げることを降圧、上げることを昇圧と呼びます。

例えば、一次200巻・二次100巻なら巻数比は2:1です。一次に24Vの交流を加えた理想例では、二次は12Vです。この24V・12Vは実効値で、交流の大きさを、抵抗で同じ平均の発熱を生じる直流に対応させた値です。波形の最大値そのものではありません。

図1の巻線の線数は、実際の巻数やこの200巻・100巻を描いたものではありません。図2で扱う巻数比と数値は、別に条件を指定した比較例です。

巻数比の式は、損失や磁束の漏れ、巻線の抵抗による電圧降下などを無視したモデルです。実機の出力は負荷や設計でも変わるため、巻数だけでどんな機器にも使える変圧器が完成するわけではありません。

電圧が変わっても、電力は増えない

図2では、損失のない理想変圧器と抵抗負荷を考えます。抵抗負荷では、実効値の電圧と電流を掛けて電力を求められます。

1の降圧例は24Vから12V。二次へ6Ωの抵抗をつなぐと、二次の電流は12V÷6Ωで2A、電力は12V×2Aで24Wです。同じ24Wを一次から受け取るため、一次は24V・1Aになります。

2の昇圧例は12Vから24V。二次の抵抗を24Ωにした場合、二次は24V・1Aで24W、一次は12V・2Aで24Wです。二つの例は負荷抵抗が違います。同じ抵抗を付けたまま電圧だけを変えた比較ではありません。

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変圧器の役割・理想条件・負荷・出力調整を比較する
理想例 一次の実効値 二次の実効値 二次の負荷 入力・出力の電力
降圧、N1:N2=2:1 24V・1A 12V・2A 6Ω どちらも24W
昇圧、N1:N2=1:2 12V・2A 24V・1A 24Ω どちらも24W

降圧したから、つないだ負荷へ必ず2Aが流れるわけではありません。 電流は負荷によって変わり、一次側の電流もそれに対応します。流せる電流には、巻線や電源などの定格による限界があります。

この計算を、モーターや電子回路などを含むすべての交流負荷へ無条件に広げないでください。交流では電圧と電流のずれなども電力に関係します。抵抗負荷に限定した例で、電圧・電流・電力を分けて理解します。

降圧2対1と昇圧1対2で、電圧と電流が逆比になり入力出力の電力はともに24Wとなる抵抗負荷の理想例 拡大して見る ↗
図 021はN1:N2=2:1、二次6Ω。2は1:2、二次24Ω。1が一次、2が二次で、数値は正弦波交流の実効値、損失なし・抵抗負荷の理想例です。Vは電圧、Iは電流、Pは電力。同じ行の棒だけを共通の尺度で比較し、異なる単位の行どうしは比較しません。二つの例の負荷は異なり、実製品の出力や定格を示していません。
  1. 降圧:一次24V・1Aから二次12V・2A。負荷6Ω、両側24W
  2. 昇圧:一次12V・2Aから二次24V・1A。負荷24Ω、両側24W

一定の直流を、そのまま変圧し続けられるわけではない

変圧器で電圧が誘導されるには、巻線を通る磁束が変わることが必要です。磁束が一定になれば、二次へ電圧を誘導し続けることはできません。電池のような直流電源を、交流用トランスへそのまま接続して使う説明ではありません。

接続・切断の瞬間に状態が変わることと、安定して電力を取り出し続けることも別です。これは電池をつなぐ実験で確かめるための手順ではありません。

一方、直流から別の直流へ変えるDC-DCコンバータにトランスが入る場合はあります。電子回路が通電を切り替えて変化する電圧や磁束を作り、出力側の整流や制御と組み合わせます。「直流を一定のままトランスへ通す」という仕組みとは違います。回路方式ごとの動作や制御条件も必要です。

変圧と、交流を直流へ変える整流は別

**普通の交流変圧器は、電圧の大きさを変えても、出力を直流にする部品ではありません。**交流から一方向の出力に変える働きが整流です。さらに、出力の変動を小さくする平滑や、必要な電圧へ整える制御もあります。

通常の交流変圧器は、周波数を変える装置でもありません。入力の交流と同じ繰り返しの速さで、電圧の大きさを変えます。電子回路で波形や周波数を作り直す働きとは分けて考えます。

ACアダプターは、これらを組み合わせた装置です。低周波のトランスで電圧を変えてから整流する方式もあれば、最初に整流し、電子回路で高周波に切り替えて小さなトランスを使う方式もあります。すべての電源が同じ順番・同じ部品配置ではありません。

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変圧器の役割・理想条件・負荷・出力調整を比較する
働き 変えるもの それだけでは行わないこと
変圧 磁束の変化を使って電圧の大きさを変える 交流を一定の直流にすること
整流 出力の向きを一方向へそろえる 電圧の変動を完全になくすこと
平滑・制御 変動を小さくし、必要な出力へ整える 個別の電池の充電条件をすべて決めること

電池への充電には、電池の種類や状態に合う充電制御が必要です。「電圧を下げたから充電器として使える」という判断はできません。

変圧は交流の大きさを変え、整流は一方向にそろえ、平滑は変動を小さくする波形の役割比較 拡大して見る ↗
図 03各行は別々の働きを比べる波形模型です。変圧の例は交流の振幅を半分にし、整流の例は全波を一方向へそろえ、平滑の例は変動を小さくしています。軸の実数値・端子極性・製品の部品順序・回路の構成は示しません。平滑しても完全な一定値にはならず、充電制御は別に必要です。
  1. 変圧:交流の大きさを変える
  2. 整流:出力を一方向へそろえる
  3. 平滑:出力の変動を小さくする

実機では、損失と絶縁の設計も重要

巻線には抵抗があり、電流が流れると発熱による損失が生じます。巻線の損失を銅損、コア側の損失をコアロスと呼びます。実物の出力電力は入力電力より小さくなり、理想例の「入力24W・出力24W」がそのまま実製品の効率を表すわけではありません。

コアの材料や構造は、使う周波数などに合わせて選びます。低周波用の鉄心と、高周波電源用のフェライトなどを、外見だけで同じものとして扱わないでください。巻線の抵抗、磁束の漏れ、コアの性質、温度、負荷などを合わせて設計します。

図1の複巻方式では一次と二次が電気的に分かれています。一方、単巻変圧器は巻線の一部を共用するため、一次と二次の電気的な絶縁がありません。電圧を変えられることと、回路間が絶縁されていることは別の性質です。

絶縁された方式でも、二次側の両端に触れるなどの危険までなくなるわけではありません。この記事は接続・製作の手順ではありません。電源装置を分解したり、裸の巻線を家庭用コンセントへ接続したりせず、定格と製品の指示に従ってください。

発電機・IHと、磁束の変え方を比べる

発電機は、軸を回す仕事によってコイルを通る磁束を変え、電気を取り出します。変圧器は、一次側の変化する電流と磁場を介して、二次へ電気のエネルギーを渡します。変圧器そのものが、外からの供給なしに電気を作り増やすわけではありません。

IHも変化する磁場を使いますが、取り出したいものは鍋底の熱です。変圧器で損失を抑えたい場所と、IHで熱を生みたい場所を比べると、同じ電磁誘導でも道具の目的が違うことが分かります。

電気のエネルギーをたどるでは、電池・発電機を供給源の入口に、変圧器で電圧を変える働き、LED・モーター・IHで光・動き・熱へ変える働きを比較できます。記事の読む順番は、実際にその順番で配線するという意味ではありません。

説明をもう一歩深く

よくある疑問

一次の電子が二次へ渡るの?

今回の複巻方式では、一次と二次の電気回路は直結していません。二つの巻線を結ぶのは磁束の変化です。巻線を共用する単巻方式は区別します。

電圧を2倍にしたら、電力も2倍?

変圧器は電力を増やす装置ではありません。図の損失のない抵抗負荷の例では入力と出力は同じ24Wで、電圧と電流の組合せが変わります。実機には損失もあります。

降圧すると、電流が必ず増える?

二次の電流は負荷にも依存します。図の2Aは12Vを6Ωの抵抗へ加えた条件です。何をつないでもその電流になるわけではありません。

電池をトランスにつなげば直流も変圧できる?

一定になった磁束では、二次へ電圧を誘導し続けられません。交流用トランスへ電池を直結する説明ではありません。トランスを使うDC-DC回路では、電子回路が通電を切り替えます。

変圧器は交流を直流にする部品?

通常の交流変圧器は電圧の大きさを変えます。一方向の出力へ変える整流、変動を小さくする平滑、必要な電圧へ整える制御は別の働きです。

すべての変圧器が一次と二次を絶縁する?

単巻変圧器は巻線の一部を共用するため、一次と二次の電気的絶縁がありません。図の複巻方式と区別します。絶縁された方式でも二次の両端への接触が安全になるわけではありません。

24Vや12Vは波形の最大値?

この記事の計算例は交流の実効値です。抵抗で同じ平均の発熱を生む直流に対応する値であり、交流の波形の最大値とは区別します。

参考資料・出典

原理の説明と図解の確認に使った資料です。特定製品の機能は一般原理と区別して扱っています。

  1. OpenStax:変圧器 ↗

    理想変圧器の巻数・電圧・電流・電力の関係。図2の二例を独自に計算。 確認:2026-10-05

  2. OpenStax:ファラデーの法則 ↗

    磁束の変化と誘導電圧、磁束が一定になった状態との区別。 確認:2026-10-01

  3. OpenStax:交流回路の電力 ↗

    実効値、抵抗負荷の電力、一般の交流負荷との区別。 確認:2026-10-01

  4. TDK:専門用語の解説 ↗

    相互誘導、共通磁気回路、銅損とコアロス。トランス・透磁率・銅損・トランス損失の項目を確認。 確認:2026-10-01

  5. TDK:DC-DCコンバータの回路技術 ↗

    通電のスイッチング、トランスを使う絶縁型の回路と方式ごとの違い。 確認:2026-10-01

  6. ローム:AC-DC変換の基本 ↗

    低周波トランス方式とスイッチング方式、変圧・整流・平滑・制御の区別。 確認:2026-10-05

  7. 富士電機テクニカ:操作用トランスとは ↗

    複巻構造とコア・磁束、巻数比、単巻では絶縁しない構造。 確認:2026-10-01

  8. 三菱電機:絶縁・非絶縁の変圧器の違い ↗

    独立した一次二次巻線の絶縁と、巻線を共用する単巻の非絶縁。 確認:2026-10-01

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