この記事の読み方8のポイント
N極を左、S極を右に置いた磁場で、コイル左側の手前向き電流に上向き、右側の奥向き電流に下向きの力が働く概念図 拡大して見る ↗
図 01軸に沿って見た一つのコイルの模式図。N→Sの青い矢印は磁場、点は手前向き・×は奥向きの電流、橙色の直線矢印は力です。この条件では時計回りのトルクになります。円は回転部分の範囲で、巻線の接続、鉄心、実製品の断面・寸法は省略しています。
  1. 永久磁石:左がN極、右がS極
  2. コイルの辺:電流の点/×を区別する
  3. 力:左は上、右は下へ働く
  4. 回転:この条件で時計回りに回そうとする
  5. 軸:回転する中心
働く順番をたどる

磁場の中の電流から、軸の仕事へ。

磁場・電流・力・切り替え・回転

永久磁石と回転コイルを使う、ブラシ付き直流の教示モデルです。方式によって配置や通電の切り替え方は異なります。途中角度・実配線・始動性能を示す図ではありません。

01永久磁石とコイル磁場の中に導線を置く
02巻線への通電ブラシと整流子を通す
03回す力電流と磁場の関係
04整流子位置に応じ接続を変える
05出力軸機械の仕事を取り出す
  1. 01

    磁場とコイルを用意する

    永久磁石が作る磁場の中に、回転するコイルを置く方式を考えます。

  2. 02

    コイルに電流を流す

    ブラシと整流子を通して、回転する巻線へ電流を受け渡します。

  3. 03

    左右の力が軸を回そうとする

    図の条件では左は上、右は下の力となり、軸を時計回りに回そうとします。

  4. 04

    回転位置に合わせて接続を変える

    整流子がコイルへの接続を切り替え、回す方向をそろえます。

  5. 05

    軸から機械の仕事を取り出す

    軸が羽根や歯車などを動かします。巻線の発熱や摩擦による損失も生じます。

コイル・磁石・接点の記号は実製品の断面や組立手順ではありません。回転位置によってトルクは変わり、一つのコイルがどの位置からも必ず始動することを示しません。

モーターは、電気で軸を回す

モーターは、電気エネルギーを機械の動きへ変える装置です。回転する軸に羽根を付ければ風を送り、歯車をつなげれば別の部品を動かせます。ただし、羽根が風を作る働きと、モーターが軸を回す原理は別です。

ここでは、永久磁石と回転するコイルを使うブラシ付き直流モーターを入口にします。直流はDCとも呼ばれます。模型などに使われる小型モーターを理解するのに役立つ方式ですが、家庭の機器すべてがこの構造というわけではありません。

観察したいのは、電流が流れる場所、磁場の向き、そこで生じる力の向きです。「磁石があるから回る」で終わらせず、なぜ同じ方向へ回り続けられるのかまで追います。

電流と磁場が、回す力を生む

磁場は、磁石などによる磁気の作用を表すものです。電流を流した導線を磁場の中に置くと、条件に応じて力が生じます。力の向きは、電流の向きと磁場の向きの両方に関係します。

図1は、軸の方向から見た単純化したモデルです。磁石のN極を左、S極を右に置き、その間の磁場を右向きにしています。コイルの左右の辺は、画面に垂直な方向へ延びているものとして示しています。丸の中の点は手前向き、丸の中の×は奥向きの電流です。電子の移動方向ではありません。

この条件で、左側には上向き、右側には下向きの力が生じます。左右の辺が同じ回転部分につながっているため、二つの力は軸を時計回りに回そうとします。この回す働きを「トルク」と呼びます。

コイルは、導線を巻いたものです。電流によってコイル自体も磁場を作りますが、図の青い矢印は外側の永久磁石による磁場を示しています。二種類の磁場の細かな分布は描いていません。

↔ 表が収まらない場合は、横にスクロールして比較できます。

モーターの記号・部品・方式を、担当する仕事で比べる
図で使う表示 何を示す? 間違えやすいこと
N・Sと青い矢印 磁石の極と、その間の磁場の向き 青い矢印は電流や空気の流れではない
点・× 画面に垂直な電流の向き 金属中の電子の移動は電流と逆向き
橙色の直線矢印 導線が受ける力の向き 力の向きと電流の向きは同じではない
黒い曲線矢印 この図で回そうとする方向 どのモーターでも時計回りとは限らない

半回転したら、そのままでは続かない

一つのコイルを考えると、回転に伴って左右の辺の位置が入れ替わります。もし同じ物理的な辺に同じ向きの電流を流し続けたら、半回転後には回そうとする向きが逆になります。そこで、回転位置に合わせてコイルの電流の向きを切り替えます。

図2のAとBは、同じコイルの二つの辺を区別する記号です。0度の状態ではAが左、Bが右。180度回った状態では、Aが右、Bが左に移っています。Aの電流は点から×へ、Bは×から点へ変わります。その結果、空間の左側は上向き、右側は下向きの力となり、回す向きをそろえられます。

入れ替わるのは、回転するコイルへの接続です。外の電源のプラスとマイナスを人が毎回つなぎ直すわけではありません。 図は二つの回転位置の比較で、途中の角度や切り替え瞬間の接触状態をすべて示してはいません。

コイルの辺AとBが半回転で位置を交換し、整流子が接続を変えることで同じ回転向きの力を保つ二状態の比較図 拡大して見る ↗
図 021は0度、2は180度の位置です。A・Bは同じコイルの辺を識別する記号で、半回転後に場所と電流の向きが変わります。下段は二分割した整流子と固定ブラシの別表示。プラス・マイナスは固定した電源側です。一つのコイルの教示モデルで、実際の配線・切り替え瞬間・始動性能を示す図ではありません。
  1. 0度の状態:Aが左、Bが右。Aは点、Bは×の電流
  2. 180度の状態:Bが左、Aが右。Aは×、Bは点の電流。下段の接点区画も交換する

ブラシと整流子は、回転中の接点

ブラシは、回転する部品へ電流を受け渡す接点です。「ブラシ」という名前でも、掃除用の毛の束を意味するとは限りません。接点は整流子に触れ、回転中も電気の通り道を作ります。

整流子は軸とともに回転し、角度に応じてブラシが触れる区画を変えます。図2の下段では、二つの区画と固定したブラシを別に見せています。区画の色は上段のA・Bに対応しています。実際の接続線は省略しているため、上段と下段を直接配線する図として使わないでください。

図の一つのコイルと二つの区画は、役割を理解するための最小モデルです。このモデルでは回転位置によって回す力が弱くなり、ゼロになる位置もあります。動いていれば慣性で通過できますが、どの位置からでも確実に始動できるとは限りません。実用モーターでは複数のコイルや整流子の区画などで、始動と回転のむらに対応します。

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モーターの記号・部品・方式を、担当する仕事で比べる
部分 この方式での役割
永久磁石・固定部分 回転するコイルの周りに磁場を作る
コイル・回転部分 電流を受け、磁場との関係で回す力を生む
ブラシ 固定した電源側から、回転する接点へ電流を渡す
整流子 回転位置に応じてコイルの接続を切り替える
軸・軸受 回転を外へ取り出し、軸を支える

ブラシレスや交流モーターは、構造が違う

ブラシレスモーターでは、ブラシと整流子による機械的な切り替えを使いません。代表的なブラシレスDC方式では永久磁石が回転側、コイルが固定側にあり、電子回路がコイルへの通電を制御します。回転位置を検出するセンサーを使う方式などがあります。「ブラシを取り去っただけの同じ配線」ではありません。

交流モーターにも複数の種類があります。代表的な方式では、固定側のコイルによって回転する磁場を作ります。誘導モーターと同期モーターは、回転側の働きや磁場との関係が違います。したがって、家電のモーターをすべて図2の整流子で説明することはできません。

↔ 表が収まらない場合は、横にスクロールして比較できます。

モーターの記号・部品・方式を、担当する仕事で比べる
方式 回転を続けるための代表的な仕組み 図1・2との関係
ブラシ付き直流 ブラシと整流子で、回転側への接続を切り替える 今回の説明の入口
ブラシレスDC 電子回路が固定側のコイルへの通電を制御する 部品の配置と切り替え方が異なる
交流の誘導・同期など 固定側が作る回転磁場などを利用する 回転側の原理を方式ごとに見る必要がある

回転数と、回す力は同じではない

回転数は、どれだけ速く回るかを表します。トルクは、軸を回す働きの大きさです。速く回ることだけで、重いものを動かす力が大きいとは判断できません。歯車を使えば回転数とトルクの関係も変わります。

永久磁石を使う直流モーターでは、磁場や電流がトルクに関係します。一方、電源電圧だけからどの条件でも回転数が決まるわけではありません。負荷、摩擦、モーターの構造、制御回路などを合わせて考えます。

また、回転中のコイルには、電源からの電流を抑える側に働く電圧が生じます。「逆起電力」と呼ばれるもので、モーターが回ることで発電の働きも生じるという関係です。基本的な直流モデルでは、回転が止まるとこの電圧が小さくなり、大きな電流が流れる条件になります。保護・制御のある製品では電流を制限する場合もあります。

軸を無理に止めたまま通電すると、発熱や故障につながります。これは試して確認するための操作ではありません。定格・負荷・製品の指示に従い、回転部へ触れたり、裸のモーターを家庭のコンセントへ接続したりしないでください。

電池から回転へ、エネルギーの行き先を見る

洗濯機では、回転で衣類と水を動かして洗う働きを助け、脱水では衣類を残して水を減らします。同じモーターの回転でも、洗いと脱水では回す部品・速さ・目的が異なります。この記事のブラシ式モーターの構造を、すべての洗濯機に共通する構造と考えないでください。

掃除機では、モーターがファンを回し、そのファンが空気に仕事をして流れを作ります。軸の回転と空気の流れ、空気からごみを分ける集じんは、それぞれ別の部品の役割です。モーターの出力や回転数だけで、床のごみの取れやすさまでは決まりません。

エレベーターでは、駆動シーブの回転をロープなどの上下の移動へ変えます。つり合いおもりで負担を減らし、速さと位置を制御して床へ合わせます。毎階の停止と、異常時の非常止めは別の仕事です。この記事のブラシ式の構造を、そのまま巻上機のモーターの実断面とは考えないでください。

電池の仕組みでは、化学反応から電気エネルギーを取り出すところを見ました。モーターは供給された電気を回転の仕事へ変えます。ただし、受け取ったエネルギーすべてが軸の仕事になるわけではなく、巻線の発熱や摩擦などによる損失もあります。

LEDは電気から光を、IHは電磁誘導を通じて鍋底の熱を生みます。同じ「電気を使う道具」でも、動かす対象と取り出す働きが違います。電池・LED・モーター・IHを読むときは、実際にその順番で直列につなぐという意味ではなく、エネルギーの変換を比較してみてください。

スピーカーも磁場の中の電流が受ける力を使いますが、振動板を前後に動かして、空気に音の波を作ります。今回のモーターで軸を回す働きと、スピーカーで往復運動を取り出す働きを比べると、同じ電気と磁場でも目的に応じて構造が変わることが分かります。

モーターは電気入力から軸の仕事へ、発電機は回す仕事から電気出力へ変える一方、両方に発熱や摩擦などの損失があることを示す比較図 拡大して見る ↗
図 03エネルギーの入口と出口を比べる役割模型。変換の向きが逆でも損失はなくならない。量の比・効率・実配線や、どの機器もそのまま逆用途に安全に使えることを示す図ではない。
  1. モーター:電気入力から軸の仕事へ
  2. 発電機:回す仕事から電気出力へ
  3. 両方:発熱・摩擦などの損失がある

回転から電気を取り出す、発電機との関係

発電機の仕組みでは、逆向きの変換を追えます。外から軸を回す仕事を与え、コイルを通る磁束を変えることで電圧を生みます。モーターの逆起電力も、回転と発電が結び付く例です。

ただし、モーターと発電機をつなげれば電気を増やし続けられるわけではありません。電気を取り出すには回す仕事が必要で、どちらにも発熱や摩擦などの損失があります。用途・定格・出力の制御も含めて区別しましょう。

説明をもう一歩深く

よくある疑問

磁石だけで回り続けるの?

回転の仕事を取り出すにはエネルギーの供給が必要です。今回のモーターでは電源からの電気を使い、磁石と電流の関係で回す力を生みます。

電流と電子は同じ向き?

金属中の電子の移動は、慣習的な電流の向きと逆です。図の点と×は電流を示し、電子の移動は示していません。

整流子は電池のプラスとマイナスを逆にする?

外の電源の極性を反転する部品ではありません。回転するコイルと固定側のブラシの接続関係を変え、コイルの電流を切り替えます。

すべてのモーターにブラシがある?

ありません。ブラシレス方式では電子回路で通電を制御します。交流の誘導・同期なども、今回の最小モデルとは構造と回転を続ける仕組みが異なります。

速く回るモーターほど力が強い?

回転数とトルクは別の量です。負荷、電源、構造、歯車や制御を含めて考えます。回転の速さだけで重いものを動かす能力は決まりません。

軸を止めても、電気は少ししか使わない?

基本的な直流モデルでは、停止すると逆起電力が小さくなり、大きな電流が流れる条件になります。発熱・故障につながるため、通電したまま軸を無理に止めないでください。製品の保護・制御も区別します。

参考資料・出典

原理の説明と図解の確認に使った資料です。特定製品の機能は一般原理と区別して扱っています。

  1. マブチモーター:電磁力の基礎 ↗

    永久磁石の間の磁場、電流と力の向き、コイルを回す働き。 確認:2026-10-01

  2. マブチモーター:モーター各部の働き ↗

    磁石・巻線・ブラシ・整流子・軸と軸受の役割。 確認:2026-10-01

  3. OpenStax:電流が流れる導線が受ける磁力 ↗

    電流と磁場に対する力の方向。図1・2の点/×と上下の力の向きを照合。 確認:2026-10-01

  4. OpenStax:コイルに働く力とトルク ↗

    コイルに働く回す力、電流の切り替え、一つのコイルのトルクと回転位置。 確認:2026-10-05

  5. ニデック:直流モーター ↗

    永久磁石型と巻線界磁型、直流モーターの磁場・電流とトルクの関係。 確認:2026-10-01

  6. ニデック:ブラシレスDCモーター ↗

    永久磁石とコイルの配置、センサーと電子回路による通電の制御。 確認:2026-10-01

  7. ニデック:交流モーター ↗

    回転磁場、誘導・同期など交流モーターの方式の違い。 確認:2026-10-01

  8. OpenStax:発電機と逆起電力 ↗

    回転中の逆起電力、負荷・停止時の電流、巻線での発熱と損失。 確認:2026-10-05

  9. マブチモーター:使用上の注意 ↗

    軸を止めた通電による発熱、回転部への接触、家庭用コンセントへの接続を避ける注意。 確認:2026-10-01

  10. Louis A. Bloomfield:掃除機のファンと空気の流れ ↗

    追加した掃除機の段落:モーターの回転をファンが空気の仕事へ変える役割の区別。 確認:2026-10-03

  11. Panasonic:洗濯機の洗う動き ↗

    洗濯機との回遊段落。羽根によるかくはんとドラムの回転、洗いと脱水の目的を区別し、既存のブラシ式図を家電全般へ一般化しない。 確認:2026-10-03

  12. 東芝エレベータ:ロープ式エレベーター ↗

    エレベーターへの回遊段落:巻上機とシーブ・ロープ・つり合いおもり、制御と着床、非常止めとの役割の違い。 確認:2026-10-04

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