この記事の読み方7のポイント
サーマル方式のヒーターと気泡、ピエゾ方式の圧電素子と膜を比較し、開いたノズルから液滴を出して紙へ着弾する図 拡大して見る ↗
図 01左は気泡を作るサーマル方式、右は膜が変形するピエゾ方式の機能例。青の矢印は補給・吐出の向き。インク室・気泡・ノズル・液滴・距離は拡大した模式配置で、同一縮尺の製品断面や連続写真ではない。 PCは左右、スマホは上下の比較。圧電素子から膜への線は力を伝える役割の記号で、実際の結合形状ではありません。
  1. サーマル:ヒーターと気泡で圧力を変える
  2. ピエゾ:圧電素子と膜の動きで圧力を変える
  3. 共通:開いたノズルから液滴を吐出する
  4. 共通:紙への着弾で点を作る
働く順番をたどる

印刷の指示から、紙に残る像へ。

指示・色材・位置・保持・準備

二つの方式を、材料と仕事で比べます。画面の画素、プリンターの点、インク一滴やトナー一粒を同じ単位として扱いません。

01指示位置と色へ処理
02色材液滴/粉の像
03配置着弾/転写
04保持吸収乾燥/定着
05準備次の吐出や像へ
  1. 01

    印刷する位置と色を用意する

    文書や画像、用紙・倍率などの設定を処理し、印刷機構へ指示します。処理場所や送信形式は構成によって違います。

  2. 02

    色材で像を作る

    インクジェットは液滴を紙へ飛ばし、電子写真ではドラム上の電気的な像をトナーの像に変えます。

  3. 03

    紙の上へ配置する

    液滴の着弾と紙送り、またはトナーの転写と紙送りを合わせます。

  4. 04

    紙に保持させる

    インクと紙に応じた吸収・乾燥など、またはトナーの熱・圧力による定着を利用します。

  5. 05

    次の印刷へ備える

    次の吐出に備えたり、ドラムに残るトナーや電荷を扱ったりして、工程を繰り返します。

共通の仕事を比べる役割模型。二つの方式が同じ部品を使う図ではなく、実機の配置・連続写真・同一の動作順序を示しません。

プリンターは、データを紙の上の点に変える

プリンターは、文字や写真のデータを印刷する位置と色の指示に変え、紙に色材を載せて像を作る装置です。身近なインクジェットは液体のインクを小さな滴として飛ばし、レーザー方式は粉のトナーを電気の働きで移して定着させます。

画面をそのまま紙へ押し写しているわけではありません。まず、用紙サイズや拡大率、色、両面印刷などの設定を含めて印刷データを処理します。文字の輪郭や写真を、プリントヘッドや光源が扱える細かな位置の指示へ変えます。こうして作る点の配置が、紙の上の線や文字、濃淡になります。

データを処理する場所は、アプリ、OSの印刷機能、ドライバー、プリンター本体などに分かれます。送る形式も、PDFのような文書や、すでに点に分けた画像などがあり、すべての機種で同じではありません。Wi-Fi・USBなどはデータを渡す経路で、インクを出す仕組みそのものではありません。

この記事では、家庭・学校・オフィスでよく使う二つの方式を、色材と動きから比較します。感熱紙に直接発色させる方式、昇華型、立体を作る3Dプリンターなど、ほかの方式をこの二つに当てはめないようにします。

インクジェットは、小さな液滴を狙った場所へ飛ばす

プリントヘッドにはインクを出す小さな穴、ノズルがあります。インクの部屋に短い圧力の変化を作り、液滴を紙へ飛ばします。多くの家庭用ではヘッドを横方向へ動かし、紙送りと組み合わせて面を埋めます。一方、紙幅にわたるヘッドを固定して、紙を通す方式もあります。

図1は、液滴を出す代表的な二つの方法を、機能断面で比べたものです。PC図の左、スマホ図の上のサーマル方式では、小さなヒーターでインクの一部を急に加熱して気泡を作り、その膨張を利用して押し出します。液体全体を長時間沸騰させたり、紙を熱で発色させたりする方式ではありません。

PC図の右、スマホ図の下のピエゾ方式では、電圧で変形する圧電素子の動きを利用して、インク室に圧力の変化を作ります。図では膜が変形する一例として表しましたが、圧電素子やインク室の配置・動かし方はヘッドによって違います。「電圧を加えたら、どの素子も同じ方向に押し込む」と一般化しないでください。

どちらも、液滴を出した後に次の吐出に備えます。圧力を変えるタイミングや液面の振動の制御が、滴の大きさ、着弾位置、速度に関わります。ピエゾ方式の吐出にヒーターを使わないことと、装置全体に熱を使う箇所が一切ないことは別です。商業用ではインクを乾かす加熱部などを持つ機種もあります。

図のインク室、気泡、ノズル、液滴、紙までの距離は大きく描いています。同じ縮尺の製品断面でも、連続写真でもありません。青の矢印は補給と吐出の向きを示し、測定した液体の流れや圧力の数値を示すものではありません。

レーザーは、紙ではなくドラムに像を書き込む

レーザー方式は「電子写真」という仕組みを使います。光に反応する表面を持った感光ドラムに、電荷の分布として印刷内容を作り、その違いを使ってトナーの像に変えます。レーザーで紙を焼いて黒くしているのではありません。

最初に、帯電という操作でドラム表面に電荷を与えます。その後、印刷データに合わせてレーザーを当てる露光を行うと、その場所の電位が変わります。まだトナーの付いていない、この電気的な像を「潜像」と呼びます。

次の現像では、帯電したトナーを現像部から供給し、電位差などを利用してドラム上に像を作ります。トナーは、色材や樹脂などを含む細かな粉です。光の当たった部分と周囲の電気的な違いを利用して、必要な位置に粒子を配置します。

帯電のプラス・マイナス、電圧、現像の条件は方式や製品によって違います。「光が当たると必ずプラスになる」「トナーと印刷部分がいつも逆の符号だから付く」と単純化すると、別の機種で説明が合わなくなります。図2では符号や電圧を描かず、帯電・露光・現像の役割を分けました。

レーザーの光は、通常、ミラーやレンズなどでドラム上へ導き、位置を変えながら書き込みます。また、レーザーの代わりに、多数のLEDを並べたヘッドで露光する電子写真方式もあります。トナーを使うプリンターがすべてレーザー光源を使うとは限りません。

トナーを紙へ移してから、熱と圧力で定着する

ドラム上のトナーを紙へ移す工程が転写です。転写部が作る電気的な作用を使い、像を保ちながら移します。図2は、モノクロ機でドラムから紙へ直接移す構成の概念図です。カラー機などでは、いったん中間転写ベルトに色ごとの像を重ね、その後で紙へ移す構成もあります。

**転写直後のトナーは、紙に載っただけの状態です。**次の定着部で熱と圧力を加え、トナーの樹脂を軟らかくして、紙に保持されるようにします。印刷直後の用紙が温かいことがあるのは、この工程と関係します。露光のレーザーが紙を加熱して定着させるのではありません。

PCの図2の左側は回転するドラム、右側は定着部です。ドラムは図の反時計回り、紙は下部を左から右へ進む配置にしました。ドラム表面の一か所が帯電、露光、現像、転写、清掃を経て次の準備に戻る関係を示しています。一枚の紙に対して、これらが一度ずつ停止しながら進む、という意味ではありません。

スマホの図2は、ドラム上に像を作る、紙へ移す、紙に保持させる三つの役割を上から順に比較します。PC図の回転配置や清掃の工程を、そのまま縮小した図ではありません。

転写後にドラムへ残るトナーは、クリーナーなどで取り除きます。残留電荷を整える働きも必要ですが、除電や再帯電の構成は機種によって違います。図では清掃の役割を示し、紙送りローラー、光学系、駆動機構、カラーの中間ベルトなどは省きました。接触部の隙間や粒子も見やすく拡大しています。

↔ 表が収まらない場合は、横にスクロールして比較できます。

液体インクと粉のトナーを、像の場所と紙に残す工程で比較する
工程 主に起きること 混同しない相手
帯電・露光 ドラムに電荷の差として像を作る 紙を光で焼くこと
現像 トナーを使い、ドラム上に見える像を作る 液体インクをノズルから飛ばすこと
転写 ドラムや中間ベルトから紙へトナーを移す 紙に十分固定すること
定着 熱と圧力で紙にトナーを保持させる レーザー光での書き込み
清掃・次の準備 残るトナーや電荷を扱い、次の像に備える 一度描いたドラムを永久に使い続けること
反時計回りの感光ドラムで帯電、光での露光、粉の現像、紙への転写、残るトナーの清掃を行い、右の別の定着部で熱と圧力を加える図 拡大して見る ↗
図 02モノクロ直接転写の機能配置。ドラムは反時計回り、下部の紙は左から右へ進む。光の書き込みと熱・圧力の定着は別。接触部の隙間・粒子を拡大し、光学系・搬送部品・カラーの中間ベルト・除電機構を省略。符号・電圧・実製品寸法を示さない。 スマホ図はドラム上の像・紙への転写・定着の三役を縦に比較し、PCの回転配置と清掃工程を再現しません。
  1. 帯電:ドラム表面に電荷を与える
  2. 露光:光で電気的な像を書く
  3. 現像:ドラム上にトナーの像を作る
  4. 転写:トナーを紙へ移す
  5. 定着:熱と圧力で紙に保持させる
  6. 清掃:残るトナーを除去し、次に備える

少ない色材で、写真の濃淡をどう作る?

カラー印刷の基本には、シアン、マゼンタ、イエロー、黒のCMYKがあります。点を細かく配置し、色や重なり、面積の割合などを変えて、離れて見ると多くの色や濃淡に見える像を作ります。必ず四つの点を同じ大きさで並べるという意味ではなく、淡い色など追加のインクを使う機種もあります。

図3は、同じ色・大きさの青い点を、同じ範囲に少なく置いた例と多く置いた例です。離れて見たときに面の濃さが変わる関係を取り出した模型で、実際の印刷では点の大きさ・色・重なりなども関わります。点の配置数からdpiや画素数、インク滴の実寸を読む図ではありません。

画面は主に赤・緑・青の光を組み合わせますが、紙では照明の光が色材や紙で吸収・反射されて目に届きます。作る色の範囲が同じとは限らず、紙の白さ、表面、色材、照明も見え方を変えます。画面で明るく光る色を、そのまま同じ発光として紙へ再現することはできません。

dpiは、1インチ当たりの点の細かさを表す単位です。ただし、印刷方式や仕様で表している点の意味・方向を確認する必要があります。**画像の一つの画素を、インク一滴やトナー一粒と同じものとして数えてはいけません。**高いdpiだけで、着弾の正確さ、階調、にじみ、用紙との相性まで決まるわけではありません。

QRコードを印刷する場合も、模様のマスとプリンターの点は別です。一つのマスを複数の印刷点で表し、黒白の境界と周囲の余白を保つことが読み取りに関わります。同じ情報を小さく印刷するほど、にじみやずれによって境界を区別しにくくなります。

同じ色と大きさの青い点を同じ面積に少なく置いた例と多く置いた例を比較する図 拡大して見る ↗
図 03色と点の大きさ、比較範囲をそろえ、点の配置数を変えた教示模型。実際の画素・インク滴・トナー粒子の寸法、dpi、明るさの数値や全方式の階調処理を示さない。PCは横二列、スマホは縦二段。
  1. 少ない点と多い点を同じ範囲で比べる
  2. 点の色と大きさは同じ条件
  3. 画像の画素・dpi・液滴や粒子は別のもの

インクとトナーの違いを、材料と工程で比べる

↔ 表が収まらない場合は、横にスクロールして比較できます。

液体インクと粉のトナーを、像の場所と紙に残す工程で比較する
比べるもの インクジェットの代表例 レーザーなど電子写真の代表例
色材の形 液体インク。染料や顔料などを含む 樹脂や色材などを含む粉のトナー
像を作る場所 ノズルから紙へ液滴を飛ばして配置 まずドラム上にトナーの像を作る
紙へ残す方法 インク・紙に応じた吸収や乾燥など 転写後に熱と圧力で定着する
必要な制御 吐出・液面・着弾とヘッド/紙送り 電荷・露光・現像・転写・定着と紙送り
調整に関わるもの ノズル、インク、紙、吐出や搬送の条件 トナー、ドラム、転写、定着、紙や搬送の条件

インクジェットなら必ず写真に強い、レーザーなら必ず速くて安い、と方式名だけで断定することはできません。印刷モード、用紙、対象の画像、機種、消耗品、使う量によって結果は変わります。印刷品質と速度の設定も、同じ機械の動きを変える条件です。

紙の種類の設定は、画面上の分類だけではありません。インクの量や乾燥、定着・搬送など、機種に応じた制御へ関わります。どんな紙でも同じように使えるとはせず、対応する用紙と設定を機種の説明書で確認します。

筋や色の違いは、どの工程から生まれる?

インクジェットで一部のノズルから正常に出ないと、その位置の点が不足し、筋や色の違いとして現れることがあります。メーカーがノズルチェックパターンを用意するのは、写真全体を見るより、吐出の欠けを分けて確認しやすいからです。ただし、すべての筋をノズルの詰まりだけで説明できるわけではありません。

電子写真方式では、色材だけでなく、ドラム、転写、定着などにも別の役割があります。トナーがあることだけで全工程が正常とは限りません。機種ごとの診断手順を使い、原因の分からないまま内部部品を調整することとは分けて考えます。

画面と紙の色が違う場合も、故障とは限りません。データの色の扱い、用紙の選択、印刷品質、色材と照明などを順に分けると、どこを確認するかが見えてきます。クリーニング等も機種の手順に従い、改善を確認せず繰り返すことを勧めません。

プリンターを理解する鍵は、データの点を、どの材料で、どこに作り、どう紙へ残すかです。インクジェットの液滴と電子写真の電荷・トナーを区別すると、同じ「印刷」の中にある、異なる仕事を追えるようになります。

説明をもう一歩深く

よくある疑問

レーザープリンターは紙を焼いて文字を作る?

光は感光ドラムへ当て、電気的な像を作ります。トナーを紙へ移した後に定着部で熱と圧力を加えます。紙へレーザーで焼き付ける仕組みではありません。

インクジェットは全部、インクを加熱する?

気泡を作るサーマル方式と、電圧で圧電素子を変形させるピエゾ方式などがあります。吐出で加熱しないことと、装置全体に乾燥などの加熱部がないことは別です。

インクとトナーは何が違う?

代表的なインクジェットは液体インクを滴として飛ばします。電子写真方式のトナーは樹脂や色材などを含む粉で、ドラム上で像を作り、紙へ転写して定着します。

転写と定着は同じ?

転写はトナーの像をドラムやベルトから紙へ移す工程です。定着はその後、熱と圧力などで紙に保持させる工程です。

カラー機もドラムから紙へ直接移す?

中間転写ベルトに各色の像を重ねてから紙へ移す構成もあります。図2の直接転写はモノクロ機の一例です。

トナー式はすべてレーザー光源?

多数のLEDを並べたヘッドで露光する電子写真方式もあります。トナーで像を作る工程と、光源の種類を分けて考えます。

dpiが高ければ、どんな印刷もきれい?

点の細かさの指標ですが、着弾・階調・紙・にじみなどは別の条件です。画像の画素とインクの一滴やトナー一粒を同じものとして数えません。

画面と印刷した紙の色が違うのは故障?

画面の発光と、紙・色材による吸収や反射は違います。再現できる色の範囲、用紙、設定、照明も関わり、故障とは限りません。

参考資料・出典

原理の説明と図解の確認に使った資料です。特定製品の機能は一般原理と区別して扱っています。

  1. キヤノン:インクジェットプリンター ↗

    液滴と紙送り、サーマル/ピエゾの原理、CMYKと着弾。図1の気泡とノズル。 確認:2026-10-06

  2. エプソン:マイクロピエゾ技術 ↗

    圧電素子による吐出、液面・駆動波形の制御。図1は機能断面で個別ヘッドの形状ではない。 確認:2026-10-06

  3. キヤノン:レーザープリンター ↗

    感光ドラム、レーザー光学系、樹脂などを含むトナー、転写と熱・圧力の定着。 確認:2026-10-06

  4. ブラザー:プリンタと印字のしくみ ↗

    帯電・露光・現像・転写・定着の区別。現像の電位差、転写ローラー、定着後の紙。図2の順序。 確認:2026-10-04

  5. ブラザー:トナーとは ↗

    粉のトナー、帯電極性・電圧の機種差。一律の符号で説明しない。 確認:2026-10-04

  6. キヤノン:imageRUNNER ADVANCE Gen3 開発秘話 ↗

    カラーの各色ドラム、中間転写ベルト、紙への転写。図2を全機種共通の直接転写としない。 確認:2026-10-04

  7. キヤノン:オフィス向け複合機 ↗

    ドラムの清掃、残留電荷、トナー除去と定着。図2の清掃は概念で個別構造ではない。 確認:2026-10-04

  8. OKI:LEDテクノロジー ↗

    直線状のLEDヘッドで潜像を書き込む方式、レーザーとの差、dpiの単位。 確認:2026-10-04

  9. キヤノン:連帳プリンター ↗

    印刷データの処理、走査/固定幅の方式、色のドット、インクと紙の相性、商業用乾燥の例外。 確認:2026-10-04

  10. Adobe:カラーモードについて ↗

    RGBの発光とCMYKの吸収・反射、デバイスの色域差。数値だけで同じ見た目にしない。 確認:2026-10-04

  11. Printer Working Group:IPP FAQ ↗

    印刷ジョブと状態の扱い、PDFなど高水準文書とラスタ等の複数の送信形式。形式を機種一律としない。 確認:2026-10-04

  12. キヤノン:印刷がかすれる・インクが出ない(G3360) ↗

    ノズルチェックと診断、クリーニング後の効果確認、無目的に繰り返すことを勧めない。機種固有手順を一般化しない。 確認:2026-10-04

  13. キヤノン:用紙をセットする(G7030/G6030/GM4030) ↗

    用紙ごとのインク・吐出・ノズル間隔の設定、対応用紙と品質。 確認:2026-10-04

  14. ブラザー:プリンタードライバーの設定(HL-3140CW/3170CDW) ↗

    用紙種類とトナーの定着・印刷品質。調整条件を機種ごとに確認する。 確認:2026-10-04

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